日本の神話には、神様の足跡として琵琶湖は描かれている。
神様がボコリと踏んだら、淡路島がポコリと盛り上がったというわけだ。琵琶湖と淡路島の形は似ていなくもないが、今の時代、本気で信じる人はいないに違いない。しかし、同じ神様事であったとしても、御利益の話となれば別のようだ。
実は、琵琶湖の畔、近江の地は「信楽狸」「福助」「招き猫」と「日本三大縁起物」発祥の地なのである。
福助さんはとても優秀な番頭さんで、彼に似せて人形を作ったのが始まり。広重の描いた「木曾街道六十九次・柏原宿」には、伊吹もぐさ“伊吹堂亀屋佐京商店”の店先の福助さんが描かれている。このお店は今も山東町柏原にあり、三代目だという巨大な福助人形が鎮座している。タヌキは他を抜く、前金など優れた七つの御利益を秘めたラッキーキャラクターで、昭和の中頃の信楽オリジナルである。
招き猫はと言えば、滋賀県彦根市がその発祥に深く関わっている。
第二代彦根藩主井伊直孝公の世田谷・豪徳寺での話だ。
「猫に招かれ、雨をしのぎ、法談に預かること、偏へに仏の因果ならん」
鷹狩りの帰りに豪徳寺で難を逃れた直孝公は申された。
豪徳寺は、直孝公との縁を機に、井伊家の菩提寺となり繁栄し、現在も招き猫の寺として有名である。つまり、彦根の側からすれば、直孝公がいなければ日本の招き猫は存在しなかったわけである……。
そして、もう一つ。
建国神話−神武天皇の時代より「鮎」は吉兆の魚として知られている。
小鮎は、琵琶湖から全国へ放流されているから、琵琶湖の畔は「日本四大縁起物発祥の地」となるのかもしれない。